はじめに
真面目で几帳面だといわれるドイツ人やスイス人には、ビールと歌と踊りを愛する大らかな面もあります。でも、ここまでユニークな性格も持っていたとは…
そう思わせる祭りがこの「オフィスチェア・ワールド・チャンピオンシップ」です。場所がドイツとスイスだけに、もっとも機能的かつ美しいオフィスチェアを作りだすことを競う大会かと思いきや、とんでもありません。オフィスチェアにまたがり、アスファルトの坂道をゴゴゴ~と滑り降りるという、ドイツ人・スイス人どころか大人らしからぬスピードレースなのです。
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オフィスチェア・ワールド・チャンピオンシップの開催会場・開催日
ドイツ南西部ヘッセン州オーデンヴァルト郡オーデンヴァルト市の中央にある鉱泉保養地バート・ケーニヒやライヒンゲンが、このかなり変わったイベントの舞台となっています。この辺りは地方都市から適度に離れた場所にある小さな町といった規模。オフィスチェア・ワールド・チャンピオンシップは、そこへ1000人近い観客を集めるというイベントに成長しています。
またスイスバージョンはその歴史が少し古く、ドイツとの国境にほど近いスイス北部のルーニンゲンで行われています。
どちらもイベントの日程は固定されていませんが、例年5月頃に行われています。心も体も暖かさにウズウズし始める頃ということでしょうか。
オフィスチェア・ワールド・チャンピオンシップの歴史
この変わったイベントの始まりはスイスの祭りなのだそうです。スイス北部のルーニンゲンという町で行われているオフィスチェアレースは、300mのコースに坂だけでなく、スラロームありジャンプ台ありの難所が設置された本格的なもの。個人戦と団体戦があり、個人戦では原則として無改造のチェアしか使用できませんが、団体戦では一定のルールの下での改造が許されています。
個人戦はスピードもあまり出ず、まっすぐ進むのもやっとで転倒者続出。それでも、参加者の奮闘ぶりは温かい拍手に包まれます。一方で団体戦はタンデム乗り用への改造っぷりと選手たちの本気っぷりに観客も圧倒されて、迫力ある声援の声が上がります。仮装がおもしろいのも団体のほう。
ドイツバージョンはこのスイス版を真似て始めたといわれ、まだ歴史は浅く数回目です。
オフィスチェア・ワールド・チャンピオンシップのルール
大きなルールは「オフィスチェアを使うこと」に尽きるでしょう。もともとは、イスにホイールがついただけのシンプルなオフィスチェアでスピード競争をしていたのです。
ところが、年を重ねるうちにレースそのものも、オフィスチェアという車体も改良が進み、スピードを追求し、面白さを表現しようとしているうちにいくつかのルールもできてきたようです。
ドイツとスイスでレースのスタイルは異なりますが、原則的なルールは似ています。まず、車体のどこかにオフィスチェアが使われていなければならないこと。これは当然マスト条件ですね。続いては、モーターは使用してはいけないこと。なるほど、これも納得です。
そしてもう一つ、デザインに凝ること。これは、表彰の「デザイン賞」がある以上、やはり当然なのかもしれません。
オフィスチェア・ワールド・チャンピオンシップの楽しみ方
参加するか見学するか、そのどちらかしかありません。参加は自由で参加費もかかりません。ただ、オフィスチェアは持ち込み。改造費ももちろん自腹です。
いいオフィスチェアを使ったから、お金をかけて改造したからといって、優勝の近道とは限りませんが、実際の優勝者の車体を見る限り、それなりの工夫と練習が必要そうです。そのため、日本から旅行気分で出かけていって参加するのは、無謀かもしれません。
では、道の脇で見るしかないのか? となりそうですが、見方にも一工夫。このレースに参加する人の間で、チャリティベースの賭けが行われていることがあります。「頑張って優勝するから僕に賭けて」というメッセージを受けていくらかを投資し、実際に優勝すると分け前があるとかないとか。
実際に大儲けをしようというわけではなく、自分が個人的に応援している選手がいると思うだけでも、観戦時の熱の入り方が変わってきそうですね。
用意するもの
参加するなら、オフィスチェアを。さらには、ヘルメットとひざ当てなどは義務化されているので、こちらも身の安全のためにも本格的なものを揃えておきましょう。あとは必要に応じてコスプレ衣装でしょうか。
救急グッズは現地で用意されているようです。また、ケガ人が続出していますが、損害賠償はかなりモメルようなので、個人で保険に加入しておきましょう。ただし、入らせてくれる保険があれば、という条件付きとなります。
観戦するだけなら、何も必要はありません。片手にビールでもあればハッピーでしょう。もし、応援している選手やチームがいるなら、ポスターや横断幕を持てば喜ばれること確実です。
一番の見どころ
それはもちろん、その改造っぷりと走りっぷりに限ります。
安定感を増すためにフレームを付け加えたり、コントロールを取るためにフレームにバーを取り付けたり、オフィスチェアのホイールのかわりにインラインスケートの連結ホイールをつけたりしているのを見ると参加者たちの本気度が伝わってきます。
中にはオフィスチェアを馬に仕立て、乗り手はカウボーイに扮した参加者などは、もうどこがオフィスチェアだったのか分からないほど。
そして、スイスのタンデムバージョンはもっとスゴイ!
力の入ったタンデムチームの車体は、もうオフィスチェアの姿はほとんど消えています。車体をER救急病棟のストレッチャー風に改造し、その周囲に救急救命士らがオフィスチェアに座っているというドラマのシーンのような出来上がりです。
ここまでやるか?? と驚かされたかと思えば、オフィスチェアをF1っぽくカラーリングしただけのシンプルさや魔女の箒に見立てたものなど微笑ましいものもあります。
どの参加者たちもレース中は真剣そのもの。身を乗り出して全身でオフィスチェアを前へ前へとコントロールし、ジャンプではバランスを取り、着地でコケることがないようブーツから火花を散らし、時には道の脇に積まれたわら束やタイヤに突っ込みます。
このレース、200mや300mというショートコースなので、出るのは一瞬、準備は数週間、ケガ一生といった感じです。観客でいたほうがいいかもしれませんね。
まとめとして
1か所ならず、2か所で行われているというオフィスチェア・ワールド・チャンピオンシップ。最近はどちらも互いに知名度を上げ合う相乗効果を発揮して急速に盛り上がり、「史上最も早く人気度がアップしたスポーツ(?)」ともいわれているそうです。
もしあなたが、日ごろ、オフィス内をイスのホイールをゴロゴロさせて動いては「怠けもの」とか「ぐうたら」とか言われているとしたら、このレースに参加して周囲を見返してみるというチャレンジはいかがでしょうか?
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