芸術の古都でオーストリアの首都であるウィーンは、どこをどう見ても芸術でできているようだ。
多くの芸術作品が存在し、それらは芸術的な建造物の中に収蔵・展示されている、市全体が博物館かと錯覚してしまうような壮大なる歴史と文化の厚みを感じることができる。
美術史美術館は、その内容の豪華さから世界中から憧れの視線を向けられている。「あそこのアレがみたい!」という一心で訪れる人は後を絶たない。
また、美術史美術館の双子の片割れ的存在の「自然史博物館」は、その人気度こそ、美術史美術館に上位の座を譲っても、その内容の豊富さや豪華さ、そして興味深さでは決して引けを取らない存在だ。
双子ミュージアム「ウィーン美術史美術館」と「ウィーン自然史博物館」
ウィーン新王宮の門の反対側の広場には、双子の建物がある。広場の中央、双子の建物の中間地点には、マリア・テレジア像が置かれている。
正面入り口に象の像が置かれているのが自然史博物館である。
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ウィーン美術史美術館の成り立ち
ハプスブルグ家の歴代王たちが、数百年以上かけて蒐集したコレクションを基礎とし、古代エジプトからギリシャローマ・中世を経て、ルネッサンス・バロックまでの多彩で豊富な展示内容を誇る。
フランツ・ヨーゼフ皇帝のウィーン改造計画の一環として建築されたもので、その収蔵内容は世界でも5本の指に入るといわれている。
まずは外観
ルネッサンス・古典主義などの建築様式が混ざった優雅で壮麗な建物は、1872年から1891年にかけて設計・建築された。
期限も予算も限定されない、無制約な計画だったため、美術館の建物そのものが贅をこらし、知恵をしぼった、芸術作品となっている。
そして内観
大理石貼りのエントランスの豪華さはもちろん、周囲を装飾するものはいずれも超級の芸術作品揃い。展示室に入る前からそんな状態だ。
中央階段では目の前に、「ミノタウロスを殺すテセウス」がドン、上を見上げると豪華絢爛な「ルネッサンス賛歌」が迫る。
さらに驚くことには、階段上方の壁画はグスタフ・クリムトによるもので、展示品ではないが、展示品以上の興味も価値もある。
本番は展示作品群
ブリューゲル・フェルメール・ラファエロなど、超有名画家たちの作品が気軽な雰囲気で壁に掛けられている。
ガラスやロープや警報器や警備員に阻まれて、何メートルも離れた地点から、それも人の流れに押されながら拝むのが当然と思われる世界的有名絵画を間近で眺め、フラッシュさえ使用しなければ写真撮影も可能。許可を取れば模写も可能という太っ腹ぶりだ。
また、展示品の中には、コイン・ミイラ用棺桶・彫像の頭部だけ、ハプスブルグ家由来の肖像画だけのコーナーもあり、収蔵作品の層の厚さを感じる。
ブリューゲル作品
1枚あれば特別展を開催できるブリューゲル作品が、展示室の四方を取り巻くように展示されているという豪華さと圧倒的な迫力。
「バベルの塔」、「雪中の狩人」、「農民の踊り」、「農家の婚礼」、「謝肉祭と四句節の戦い」、「青い花瓶の花束」など、ブリューゲル作品の4分の1がここに揃っている。
フェルメール
「画家のアトリエ」が有名。これだけを目当てにはるばる訪れる愛好家も多い。また、模写する絵学生や趣味の域を超えた老人たちの作品を覗き見るのも楽しい。
クリムト
美術史美術館のグスタフ・クリムト作品というと、「見つけた!壁画」、または、「見逃した!壁画」のように、中央階段の途中から見上げる壁の高いところに描かれた壁画が有名だ。
こちらの作品は、床からだと遠すぎてよく見えないため、多くの見学者が階段途中で上を見上げてフラフラするという状況になる。そのため、近年壁上方に足場が組まれていて、ゆっくりと近くから見ることができるようになったとの情報もある。
ハプスブルグ家の肖像画群
ハプスブルグ家の歴代皇帝や王妃たちが、有名画家たちに描かせた各種肖像画が一堂に集められている。
絵画に登場する一人ひとりは有名ではないとしても、ハプスブルグ家が持つ威信や財力、そして芸術への傾倒ぶりがうかがえる展示室となっている。
珍品コレクション
皇帝ルドルフII世のコレクション、エキゾティカ・グループとは、珍品揃い。中でも有名なのが、世界的に名高い黄金の塩入れ「サリエラ」だ。一度盗難に遭うも、発見されたといういわくつきの品。
また、アンチンボルトの「夏」もぜひチェックしたい。顔がすべて野菜でできていて、遠くから見た時と近づいて見た時の印象がガラリと変わる。不思議な絵だ。
おまけにカフェとショップ
美術館内には、時代物の椅子やベンチが置かれ、疲れた時はもちろん、じっくりゆっくり絵を鑑賞したいときにも座って眺めることができる。
しかし、ミュージアムカフェも、その存在がそのままある種の雰囲気を持っていて、立ち寄らずにはいられない。
カフェやアイスクリームといったティータイムか軽食を取ることができる。
疲れた目や足を休めるだけでなく、売店で買いこんだ画集を眺めたり、絵葉書を書いたりして過ごすのにぴったりで、腰がますます重くなってしまいそうだ。
ただし、旅行中のボロけた服装で訪れると、気後れしてしまって居心地の悪い思いをする可能性もなきにしもあらず。
王宮内の一室でお茶をごちそうになるくらいの格式高さが味わえる場所だ。
双子の片割れ、ウィーン自然史博物館
マリア・テレジアの夫であるフランツ皇帝のコレクションを元とする博物館。展示品と施設は国有財産であり、運営資金のほとんども国の補助金で賄われている。しかし、運営そのものは民間によって行われている。
先史時代の過去から現代までの、動物・植物・鉱物などの地上の自然物を紹介し、古代遺跡の出土品も多く展示されている。理科や科学の学習にもってこいの場所だが、その建物の中も外もやはり王宮並の豪華さだ。
見逃し注意!
特に、約2万5千年前のものだとされる出土品「ヴィレンドルフのヴィーナス」は、よほど注意を払っていないと、見逃してしまう小ささで地味さ。要注意だ。
そのほか、ヨーロッパを中心とした古代遺跡の出土品や遺物は、どれもさりげなく展示されているが、貴重なものばかり。説明も少なくどれも小さいものが多いために、サラっと素通りしてしまいがちだが、時間があればゆっくりと味わいたいものばかりだ。
世界最大級トパーズ
芸術作品としても自然界の傑作としても見逃せないのが、トパーズ。その大きさにも不思議な輝きにも目を奪われる。その重さは117キロ!
ちょっと不気味だけど目が離せない
動植物たちの展示は剥製が大量に飾られている。そのフロアはどちらをみても剥製だらけ。苦手な人にとっては、かなりの恐怖かもしれない。
では、生きていればいいか?
小動物や鳥・虫などの展示があり、こちらは生きた状態。剥製に比べるとスペースも展示数も小規模だが、小さすぎて飛べない鳥や毒虫など、珍しいもの揃いなので、興味は惹かれる。
チケッティング
チケットは何種類かある。美術史美術館で購入する一般的な入場券は、ヘルデンプラッツにある新王宮 のエフェソス博物館、古楽器コレクション、武器・甲冑コレクションなどの入場券としても使用することができる。
「王宮宝物館」とのコンビチケットや、ウィーン市内のミュージアムパスなども使用できるので、日程や予算と相談してお得な方法を探したい。
見学方法
たっぷり時間をかけて端から端まで見て回る数日間パターン。目当ての絵へ突撃し、残り時間で全体をさらう半日から1日パターン。とにかくこれだけ!的な数時間パターンなどがある。
ほとんどの旅行者に許されるのは長くとも1日程度だろう。しかし、見どころを絞り込むのは至難の業。
また、古い美術品が多いため、定期的に修復作業が行われている。いざ出かけていったら、修復中ということがないよう、事前の調べは十分に。
最後に
ウィーンでは見たいものしたいことがたくさんあり過ぎて、いくら時間があっても足りないはずだ。
そんな中、たった1枚の絵を目的に美術史美術館を訪れ、たった1つの小さな像を目的に自然史博物館を訪れる。
そんな贅沢も時にはいいのではないだろうか?
特に、芸術には特別な興味を持たず、美術館・博物館はどこでどれを見ても同じだと感じるタイプには、そのミュージアムが持つ何か1品に的を絞って下調べをして出かけることをおすすめする。
インターネットで情報はかなり詳細に伝わるようになった。しかし、本物の芸術は本物を目の当たりにして初めて感動するものだと気づくことができるだろう。
そこを訪れた人しか感じることのできない感動を、写真、動画、そして言葉で表現してみませんか? あなたの旅の話を聞かせてください。
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