アダムとイブがここに? エデンの園? 地上の楽園? 本当にあったのか⁉
その島を訪れたなら、「楽園」であることに異議を唱えることはできないだろう。さらに、アダムとイブの生まれ変わりを目にしたなら、この地が「エデンの園」であることにも納得してしまうに違いない。
世界に楽園と呼ばれる地はいくつもあるが、プララン島はその中でも間違いなく特別である。いったいこの島のどこが楽園だというのか、どうしてエデンの園と呼ばれるようになったのか、プララン島とプララン島の世界遺産「ヴァレ・ド・メ自然保護区(Vallée de Mai Nature Reserve)」を巡ってみた。
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インド洋の小島がエデンの園になるまで
アラブ系商人たちが交易途中で立ち寄る港であり、海賊たちの隠れ家的港だった小さな島が、正式に歴史上「発見」されたのは1744年のこと。探検家が立ち寄り「パルメ島」と名前が付けられた。
フランスの管理下となったものの、島はその後も変わることなく小さな寄港地としての役目を果たしつつ、フランス海軍の寄港地・駐留地へと地味に発展していった。そして1768年、フランスの外交官であり海軍大臣でもあったプラズランの名からプララン島と改名された。
その美しく独特な進化を遂げた生態系はフランス系の裕福層にとって最高のレジャー目的となり、ここに極上の楽園が誕生したのだ。
アンス・ラジオ
プララン島の自然がどれほど美しいかは、小さなサンゴ礁島とそれを囲む海を見れば一目瞭然だ。
島の北西に位置するアンス・ラジオは真っ白なビーチ。まるで完璧に設計された巨大な水槽のような美が出迎えてくれる。人が旅行で訪れることのできる「世界一美しいビーチ」として、各方面で認定されることも多いが、納得。
海の美しさは言うまでもないが、特筆すべきは浜辺のプレーンさだろう。ハデなパラソルはない、うるさい売り子もいない、マリンスポーツもほとんどできない。これをつまらないとみるか、「最高!」とみるかは人によって見解が分かれるところだろうが、「楽園」にはお土産を抱えて売り歩く人はいないだろうし、クラブ音楽もかかってはいないはずだ。
アンス・ジョルゼット
プララン島のもう一つの宝がアンス・ジョルゼットだ。世界一の美しさを誇るアンス・ラジオよりも美しいと言われるが、そこへ到達するのが難しいために、うわさばかりが先行しているピーチだ。
ゴルフ場内をカートで走り、さらにブッシュを抜けていくか、ほかのビーチや港から船でアプローチするしか、到達方法がない。当然、そこにアメニティは期待できない。でも、文句なしの「楽園」がそこには悠然と広がっている。
ヴァレ・ド・メ自然保護区
セイシェル内に2か所ある世界遺産のうちの1つ。特有の生態系を持つことから、念入りな保護と厳しい規制が行われているジャングル地帯だ。
「巨人の谷」というネーミングの通り、人の小ささを思い知らされるような、数メートルの葉を広げる数十メートルの木々がうっそうと茂って薄暗く、心なしかひんやりとした空気に満たされている。これが日本であれば、霊気が漂っているとかマイナスイオンが満ちていると表現されるのではないだろうか。
古くはこのプララン島のより広い面積をヴァレ・ド・メ自然保護区のような森が覆っていたという。
アダムとイブの生まれ変わり?「ココ・デ・メール」
ヴァレ・ド・メ自然保護区の見どころは、大きく2つに絞ると双子ヤシ「ココ・デ・メール」と「ブラックパロット」にあるだろう。
自然保護区内には4000から5000本のココ・デ・メールが自生している。不正な伐採などでその数は減少傾向にあるが、ココ・デ・メールはこのプララン島と隣のキュリーズ島にしか生息しない。これは、生息していないという意味であるだけでなく、ほかの地域に移植しようとしてもできないという意味でもある。不思議なことに、どこへ移植しても持ち出しても、根づくことがないというのだ。
だが、ココ・デ・メールの不思議はそれだけではない。その実の形にこそが「エデンの園」を連想させるのだ。直径が50センチ重さ20㎏にもなる実は、一般的なヤシの実とは全く異なる外見を持っている。それは、雌株が女性の下腹部に、雄株が男性シンボルにそっくりというちょっぴりハレンチな驚きを与えてくれる。
ココ・デ・メールが生み出した数々の伝説
プララン島の存在がまだ知られていなかったころ、モルジブなどのインド洋岸で時折その不思議なヤシの実の姿が確認されていた。そのため、学名にはモルジブの名が入っている。
しかし、当時この不思議な姿をしたヤシの実は、木になっている姿では見つけることができず、常に海岸に流れ着いたものとして発見されていた。そこで人々は、「海の底に這えているヤシの実に違いない」と考え、ココ・デ・メール「海のヤシ」と呼ばれるようになったのだ。
男女をイメージさせる形状から、媚薬として珍重された時代もあれば、その透明な果実は億万長者しか食べられないデザートとして供されたこともあったという。
また、雌株と雄株とは互いに触れ合うことができない距離にあるという。そこで、彼らは夜更けになると木の実から人の姿にかわり、デートを楽しんでいるという伝説、その昔アダムとイブはこの楽園から追放されたが、どうしてもこの地を忘れられずヤシの実となって帰ってきたという説なども残されている。
いずれにせよ、敬虔なキリスト教徒にとっては、アダムとイブを連想させるに十分なその姿なのだ。食材としてだけでなく、宗教的な理由からも需要があるため、不正採取が後をたたないともいう。
鳥の楽園で黒いオウムを探す
ホテルのテラスで食事をしていると、手乗りかと思うような距離で色とりどりの鳥たちがおこぼれをついばむのを見かける。気をつけていないと、ビュッフェの食事の中に紛れ込んでいることさえある。
これらの鳥たちの一部もまた島固有種だ。特に、ブラックパロットと呼ばれる黒いオウムは非常に珍しい。黒々としたココ・デ・メールの実とそっくりな色のオウム。森の中でその姿を確認するのはなかなか難しいが、鳥に詳しいガイドに出会えれば遭遇確率もアップする。
プララン島の1日
プララン島は静かなリゾートアイランドだ。楽園は楽園でも、ヒッピーやバックパッカーなどにとってのそれではなく、優雅なひと時を過ごすリゾーターたちのための島。ホテルはプライバシーを重視したコテージタイプが多く、ホテル内はしっとりと落ち着いた雰囲気だ。
わざわざ時間をかけてプララン島までやってきたリゾーターたちが望むのは、ビーチスポーツでもナイトライフでもなく、楽園の中に自分を埋没させること。
朝は島の東側で朝日を、昼は木陰で鳥のさえずりに耳を預け、夕方には島の西側で夕日をみる。そして極めつけは島中で見ることのできる星空。
この贅沢を理解できる人だけが、プララン島を楽園として楽しむことができるのかもしれない。
最後に
日本からエデンの園への直行便はもちろんない。途中最低でも2度、1、2泊してようやく到達できるという遠い楽園だ。
そのため、日本人に出会うことは少ない。ほとんどはフランス語圏からのリゾーターたち。あとは各地からのハネムーナーだ。
アダムとイブが追放されてもなお、人の姿を捨ててヤシの実となってでも帰りたがったというプララン島。さて、旅人としてプララン島を訪れた現代人たちは、巨大な女性のヒップと男性シンボルを見て、果たしてどんな楽園をイメージするのだろうか?
そこを訪れた人しか感じることのできない感動を、写真、動画、そして言葉で表現してみませんか? あなたの旅の話を聞かせてください。
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