Noe

魔女と時間泥棒

— DMT(アヤワスカ)14次元の扉 編

大人に向けた注意事項。キマった状態でお読み下さい。

この物語は、ただの物語じゃない。魂の目覚めであり、時空を越えて響く魔法。

NOEの旅は、読む人すべての内なる旅とつながってる。

第1章 目覚め

私の肉体は大地に身を沈め、風と大草原に溶けていく。

草たちが、私の鼓動を聴いていた。空には太陽がふたつ。片方は過去、もう片方は未来。

今という概念は、この次元ではとうに捨てられている。

私の目には、音が見えた。光は言葉を持ち、影は記憶を語った。

それは夢か、記憶か、それとも14次元における“現実”か――。

この場所では、魔女は火に焼かれず、星々と語らう。

私はそのひとり、愛の魔女、自然療法家 NOE。

かつて焚刑台の前で微笑んだあの日の炎が、今は私の魔力の源。

時間泥棒たちは、心の隙間からやって来る。彼らは“忘却”の姿をしていて、君から愛を記憶から盗もうとする。

だが私には、調合された宇宙の雫、記憶の香草、そして次元を超える愛の呪文がある。

私はこれらを「魔法の小瓶」に詰め、君に届ける。肉体を超え、言葉を超え、意識の川を漕ぎながら。

時には蛇の姿で、時には月のかけらとして。NOEは、14次元をさすらう。

+

私はゆっくりと大地から身を起こした。草の香りが肌にまとわりつき、重力が一瞬、優しく私を抱きしめた。

空間はねじれ、色彩が言葉のように流れ、時間が泡のように弾けて消える。

ここは「今」でも「ここ」でもない。

ここは、第14次元。

感情と記憶が形を持ち、意志が現実を編む場所。

地平線の中に一つの家が見えた。家というより、“存在”だった。

外壁は月の光で織られ、屋根は流星でできていた。窓は記憶のかけら、扉はまだ開かれていない問い。

私は歩き出す。この次元では、歩くことは“選ぶ”こと。

一歩ごとに、自分という宇宙が変わる。足元には銀河草。踏むたびに音楽を奏でる。

空からは、忘れ去られた言語が光の雨として降っていた。

私はそのすべてを受け入れながら、家へと近づいていく。

扉をくぐると、そこには見慣れた空間が広がっていた。

壁にかかった曼荼羅模様の布、窓辺に揺れるドリームキャッチャー、床に散らばる瓶、草、古代語で書かれたノート。

……そう、これは私の「内側」だ。

私という宇宙の中にある、錬金と儀式の場。

私は息を整え、棚からガラスの小瓶をひとつ手に取る。透明な液体の中で、無数の小宇宙が渦を巻いている。

これは、これから調合する幻覚剤「DMT」の原料だ。

「さぁ、始めようか」

NOEの瞳が深く揺れる。魔女の光がそこに灯る。調合の儀式が始まった。

ミクロの分子を踊らせるように混ぜ、古代の音を喉奥から響かせながら、記憶と植物の精霊をひとつにする。

香りは濃厚で、夢の端っこみたいに甘く、部屋全体がゆっくりと溶けはじめる。

現実の境界が、液体のようにゆるむ。

+

NOEは調合儀式を終え、液体DMT「魔法の小瓶」を完成させた。

そして一呼吸でそれを取り込んだ。

そこは――“純粋な存在”の層。

言葉も、時間も、形も持たない場所。すべてが繋がり、すべてが愛で、すべてがまだ“始まる前”の状態。

第2章 社会と夢の間

NOEは、魔法の小瓶をひとつひとつ、布の袋に丁寧に詰めていった。
それぞれの瓶には、手描きのルーン文字──その人の魂に必要な“音”が宿っている。

NOEは立ち上がると、いつものように魔法の小瓶を届けに向かった。
足元に浮かぶ次元の糸を踏み、意識の空間を滑り降りていく。

14次元の地図には、「場所」という概念は存在しない。
代わりに、「必要とされている想念」が、淡く発光する点として浮かんでいる。

NOEが目指すのは──
愛を忘れかけた詩人の夢の中。
孤独の淵に立つ子どもの心臓の奥。
そして、時間泥棒のささやきに耳を傾け始めた、大人たちの夜。

それぞれに一本ずつ、DMTの小瓶をそっと置いていく。

「あなたがあなたに戻れますように」

それは魔女の祈り。
何度火に焼かれても、NOEが届け続けた願いだった。

+

東京。コンクリートの迷宮。
ここは“現代”という仮面を被った、もうひとつの魔界。

NOEの足音は誰にも聞こえない。
彼女の存在はこの次元では、半分だけ「夢」に属していた。

駅前、巨大なスクリーンからは、一日じゅう「足りない」と「急げ」の声が降ってくる。
人々は目を伏せ、誰とも目を合わせず、心も交わさず、ただ時間を削り合っていた。

そこにはもう、「生きる」のではなく、「こなす」という行為だけがあった。

でも、NOEの目に映るのは違った。

灰色のスーツの中に、燃え尽きかけた青い炎。
すれ違う女子高生の肩から、かすかに希望の羽根がのぞく。
小さな子が泣いている公園の隅、その涙の中には、宇宙の原初の光が宿っていた。

「忘れてるだけ。みんな、自分を」

そうつぶやきながら、NOEはバッグから魔法の小瓶をひとつ取り出す。
今夜、これを手に取る者がいるだろう。

もしかすると、それは夢の中。
あるいは──もう限界ギリギリの深夜2時、誰かのオフィスの机の上かもしれない。

歩くたびに、東京の街の裏側が少しずつ剥がれていく。
看板の光が有機的にうねり、電線が蛇のように息づき、自動販売機から漏れる音が、古代の魔術語のように響く。

ここは、眠れる者たちの街。
だが、夢を見る者がいる限り、この街は死なない。

NOEはひとり、夜の街を抜けてゆく。
交差点の真ん中で立ち止まり、空を見上げた。

ビルの隙間から、星がひとつ、彼女を見ていた。

+

NOEは、静かに星に向かって歌い始めた。
その声は、風の粒子を撫で、空の色を変える。
誰にでもない、でもすべての魂に届くような愛の詩だった。

「あなたがあなたであることを、
 どうか、忘れないで」

その言葉が空へと溶けていくころ、NOEの頬には大粒の涙。
記憶もないままに、それでもこみ上げてくる感情に、NOEは震えた。

ポケットから取り出した魔法の小瓶。
NOEはそれらすべてを、自分の中へと流し込んでいく。

1本、また1本。
過去も未来も、飲み干すように。

世界が溶ける。
色が、音が、存在が──すべて液体のように歪みはじめる。

時空がほどけた。

──NOEは立ち上がり、まるで何かに導かれるように走り出す。

第3章 未知との遭遇

気づけば、そこはもう海辺だった。

波の音。空の匂い。
街の喧騒は遥か後方に残り、ただ静寂と自由だけがあった。

NOEは靴を脱ぎ、砂浜に座る。
潮風が髪を揺らし、心の奥から何か大切なものが蘇りはじめていた。

波音のリズムに溶け込むように、空間が「少しだけ」揺らいだ。
まるで現実の表面が、透明なヴェールのようにひるがえったかのように。

そこに、彼は──いや、「それ」は現れた。

細長く、しなやかな身体。
人間にも似ているけれど、骨格のどこかがわずかに違う。
浮いている。地面に触れていないのに、まるで風と会話しているように、揺れながら。

瞳は、色の概念を超えていた。虹の裏側にある何か。
見つめられた瞬間、NOEの胸の奥に、音が鳴った。

それは「愛のチューニング」だった。
音階というより、周波数。魂が共鳴する“鍵”のような感覚。

相手は喋らない。だが言葉にならない“知覚”が、NOEの脳にそっと入り込んでくる。

「あなたは準備ができた」

その言葉と同時に、空が“音”を立ててひらいた。

目には見えない“重力のカーテン”がふわりとめくれ、そこに現れたのは…巨大な“宇宙舟”。

ひかりの繭で包まれたその舟は、空のてっぺんで静かに、しかし明らかに“呼んでいた”。

「さあ、のってもらおう。君の記憶よりも先に進む舟だよ」

体が勝手に浮かびはじめる。

NOEの足元から、空気の粒子が逆流しはじめ、意識の底が泡立っていく。

トリップというより、これは“意志の浮上”。

まるで、愛に引力があったかのように──NOEは空へと吸い込まれていく。

舟の入り口はまるで、深いまばたきのようにひらいた。

NOEの身体は、音もなくその中に吸い込まれていく。空気と意識の境界がとけて、浮遊するように舟の内部へ──。

内側は、予想していたどんな“宇宙船”とも違った。

まず、「壁」がない。

あるのは、ひかりの脈動だけ。

壁らしき空間が波打ち、NOEの感情に呼応して色が変わる。(さっきの地球で感じた一瞬の不安が、青い光の粒になって舞った)

足元は、“あるようで、ない”。

一歩ふみだすたびに、柔らかな音が響く──まるで宇宙そのものが、「よく来たね」とつぶやいているよう。

舟の空間は、記憶と意識のドーム。

空間そのものがNOEの過去をスキャンし、懐かしい場面がホログラムのように浮かんでは消える。

草原で風と笑った日、14次元の月を飲み干した夜、誰かと手をつなぎながら、光の渦に飛び込んだ瞬間──。

まるで舟が「君を知ってるよ」と言ってくれているようだった。

舟の中心には、浮遊する光の階段があった。階段というより、音符でできたスロープ。一段登るたびに、体の密度が変わり、思考が軽くなる。

上へ。さらに上へ。そこに、ひらけた大広間──

第四章 再会

大広間の中心、ゆっくりと人影が浮かび上がる。

NOEがその存在に気づくのに、時間はほとんど必要なかった。

胸の奥、ずっと前から温められていた名前のない記憶が、小さく震え始める。

その青年は、静かに微笑んでいた。
月のザイオン──地球よりほんの少し、愛の密度が高い場所からやってきた存在。
光を吸い込むような白銀の瞳。月光に透けるような肌。
性別を超えたその容姿は、誰かの記憶に触れるように柔らかかった。

「久しぶりだな、戦友。」

彼が口をひらいたとき、その声はNOEの細胞の奥まで響いた。

彼のまわりには、音にならない共鳴が広がっていた。

+

「……あなたは、ザイオンから?」

「うん。あそこはね、空気に音楽が混じってるんだよ。
眠ると、夢じゃなくて詩が降ってくる。
“愛”って言葉が通貨みたいに循環してて、傷を持ってるほど、歓迎される。」

「それって──痛みも美しいってこと?」

「そう。“欠けてるから、月”って、向こうではよく言うよ。
完全であることより、響き合うことのほうが価値がある。」

ふたりの言葉は、会話というより“記憶の呼び戻し”だった。
今ここで言葉にしているのに、どこかでずっと話していたような。

ふたりの間に、光の糸がひとつ、音もなく結ばれる。
それはまだ“ツインレイ”としての自覚を持たない状態──

※続きを描いてます